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「アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎ガイドライン2013」概訳、「日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010」との対比 (3)治療判断編

(1)診断編

(2)画像検査編

(3)治療判断編(←今ここ)

(4)抗菌薬編

(5)補助治療編

ABSのうち、「重症」群と「悪化」群には、抗菌薬を処方すべきである。(Evidence Quality: B; Strong Recommendation)

ABSのうち、「持続」群では、抗菌薬を処方するか、3日間の経過観察を行うかを選択する。(Evidence Quality: B; Recommendation)

 

2001年のAAPガイドラインでは、ABSと診断された全例に抗菌薬治療が推奨されていたが、このガイドラインでは「症状が持続している」タイプのABSにおいては、経過観察の選択肢が設けられた。

ただし、「重症」群と「悪化」群では、引き続き、抗菌薬治療がなされるべきである、としている。

 

抗菌薬の投与により、ABSは改善が見込める(NNT3-5)が、一方で自然軽快する児もいる。

「持続」群の症状は一般的には軽いが、それが児のQOLに与える影響は様々であり、抗菌薬によって得られる利益も、その副作用もまた様々であるので、結局、バランスが必要となり、治療を行うか経過観察をするかは家族と相談する必要がある。

 

ガイドラインでは「持続」群の中でも、以下の患者に対して、3日間の観察という選択の余地を残している。

  • 過去4週間以内に抗菌薬治療を受けていない
  • 中耳炎、肺炎、リンパ節炎、溶連菌生扁桃炎など、他に細菌感染症を伴っていない
  • 眼窩合併症、頭蓋内合併症がない
  • 喘息、嚢胞性線維症(白人に多いらしい)、免疫不全、過去の副鼻腔手術歴、上気道の解剖学的異常などの持病を持たない

 

逆にいえば、これに当てはまらない患者に対しては抗菌薬の使用を推奨している。

 

日鼻誌2010との対比

日鼻誌2010では、重症度分類にスコアリングシステムを導入し、軽症・中等症・重症を分けた上で、軽症例は経過観察を推奨、中等症以上は抗菌薬化療としている。日鼻誌2010のほうが厳格である一方、日常診療でスコアリングシステムを入れるのは煩雑であることと、鼻腔所見が必須であることが多くの小児科医には難しく感じられるだろう。AAP2013は、この点が非常に大雑把であり、国民性のような対比が感じられる。