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「アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎ガイドライン2013」概訳、「日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010」との対比 (1)診断編

Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of Acute Bacterial Sinusitis in Children Aged 1 to 18 Years.

アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎の診断管理ガイドライン2013(以下AAP2013)

 

長くなったので5編に分けます。

(1)診断編(←今ここ)

(2)画像検査編

(3)治療可否判断編

(4)抗菌薬編

(5)補助治療編

急性細菌性副鼻腔炎(以下ABS)の診断:(Evidence Quality: B; Recommendation)

まずウィルス性上気道炎(以下URI感冒)の症状を記述する。

鼻汁は透明から始まり、経過中にしばしば膿状となり、再び透明となる(またはそのまま消失する)。また、発熱は発症して24~48時間後には解消するが、呼吸器症状はそれよりも長く続く。URIは一般的に5~7日間続くが、呼吸器症状は3~6日目にピークとなり、時には10日目を越えて持続することもある。

 

ABSの症状は、鼻汁(性状を問わない)、昼間咳嗽(夜間より増悪することもある)、いずれか又は両方である。口臭、倦怠感、、頭痛、食欲低下は、よく見られるものの、ABSに特異的な症状ではない。

 

  • 理学的診察で、URIABSを区別することは有用ではない。
  • 鼻甲介の発赤や腫脹は特異的な所見ではない。
  • 打診も有用でない。透光性を診ることは、不確実であり、小児では実施が難しい。
  • 咽頭の培養は、ABSの原因を正確には反映しない。

 

ABSの診断は、URIの児において、以下のいずれかを認めた時になされる。

  1. 持続:鼻汁または昼間咳嗽が、改善せず10日以上持続
  2. 悪化:症状が一旦改善を示した後、鼻汁・昼間咳嗽あるいは発熱が新規出現・再燃
  3. 重症:3日以上持続する膿状鼻汁と39度以上の発熱の持続

 

持続:

  • URIの児のうち、「持続」に該当するのは6~7%である。
  • URIに連続して罹患している症例をきちんと除外すること(※実際には難しいと思うが)。
  • また、症状がほんとうに改善していないのか確認すること。

悪化:"double sickening"

  • URIの第6・7病日に再燃することが、しばしばみられる。
  • このターゲットに抗菌薬を使用し良好なアウトカムを得たスタディー(PMID:19564277)があり、この基準を支持する。

重症:

  • URIでは、発熱は普通最初の48時間以内で改善する。
  • 一方、URIにおいて、鼻汁は、最初の数日間は透明であり、膿性鼻汁はその後に認められる。
  • よって、最初の3~4日のうちに高熱と膿性鼻汁を「両方とも」認める場合は、ABSが示唆される。

 

アレルギー性鼻炎(および非アレルギー性鼻炎)は、ABSの原因となるが、一方でABSそのものと誤認されることがある。このような「非感染性の鼻炎」は、ABSの診断時に除外すること。

 

日鼻誌2010との対比

日鼻誌2010では、「急性鼻副鼻腔炎とは、急性に発症し、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽といった呼吸器症状を呈し、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患」と定義されている。鼻汁は膿性であることが一般的とされているが、AAP2013は膿性鼻汁にこだわってはいない。また、日鼻誌2010は急性鼻副鼻腔炎を独立した疾患として定義しようとしているのに対し、AAP2013ではURIからの連続性を非常に重視ししている。

定義としてはAAP2013のほうがシンプルかつ強固なもののように思われる。