ラテンアメリカにおけるロタワクチン 利得は腸重積リスクを上回るか?
Potential intussusception risk versus benefits of rotavirus vaccination in the United States.
Pediatr Infect Dis J. 2013 Jan;32(1):1-7
Desai R. et al.
PMID: 22929172
1999年に発売されたロタウィルスのワクチン「ロタシールド」は、接種後の腸重積リスクが上昇することが懸念されたことから、接種が中止された。
現在、「ロタテック」「ロタリックス」の2つのワクチンが、新たに実施されている。これらのワクチンは、トライアルの時点では腸重積の増加は診られなかったが、発売後の調査では、いずれのワクチンも、接種後1週間以内の腸重積発症リスクが4-6倍に上昇することがわかってきた。
とは言え、ロタウィルスは周知の通り乳幼児の重症胃腸炎、入院、死亡に大きく関与しているので、ワクチンの利益と腸重積による損失を比較しなければならない。
ラテンアメリカ14カ国は、2006年からロタワクチンを導入した。12カ国がロタリックス、2カ国がロタテックを採用している。
この14カ国の乳幼児Birth-Cohort 950万人が調査対象。
ロタワクチンは、年間144,746人(90%CI 128,821 - 156,707)の入院を防ぐ。
また、年間4124人(3740 - 4239)の死亡を防ぐ。
しかし、腸重積により年間172人(126 - 293)の入院を引き起こし、
そしてそのうち10人(6 - 17)がそれによって死亡する。
以上のように推測された。
結論:
ロタワクチンによって得られる利得は、短期間の腸重積リスクを大きく上回る。
コメント:
ただし、医療施設の充実していない国も含まれており、日本のように、「ロタウィルスによって胃腸炎になってもそうそう死なない国」では、また別の計算が必要である。
胃腸炎の受診頻度が非常に高いことや、医療費、親の逸失する給与を含めると、日本でも利得が上回るように思われるが。