「アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎ガイドライン2013」概訳、「日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010」との対比 (2)画像検査編
(1)診断編
(2)画像検査編(←今ここ)
(3)治療可否判断編
(4)抗菌薬編
(5)補助治療編
ABSとURIの鑑別を目的として画像検査を実施すべきではない(Evidence Quality: B; Strong Recommendation)
ABSの診断は上述のようにURIに引き続く症状のパターンによってなされるものである。画像検査はABSを疑われる小児において診断のために使用されてきたが「もはや推奨されない」とされている。
ABSではない通常のURIであっても、粘膜の炎症は鼻粘膜から時に副鼻腔や中耳に及ぶ。1970~80年代には、単純なURIでも、X線写真にて頻繁に副鼻腔に異常を呈するという観察がされている。(この場合の異常所見とは、透過性低下、粘膜が4mm以上に肥厚、液体貯留をいう)。
その後CTやMRIの発達もあったが、複数のスタディーにより、それらがABSの診断に役立たないことが示されている。
たとえば、Manningらの報告によれば、他の目的でCTやMRIを実施した患者にて、全体の62%はURIの所見あるいは既往があり、画像では55%に副鼻腔の異常所見、33%に明確な粘膜肥厚あるいは液体貯留が認められた、とのことである。
つまり、無症状でも画像上の異常を呈する人が多いということである。
呼吸器症状のある患者において、「CTやMRIで異常所見がない」ことは、ABSでないことを示すが、一方、「異常所見がある」ことでは、ABSの診断を確定することができないのである。
眼窩あるいは中枢神経系(CNS)の合併症が疑われる場合は、造影CT/造影MRIを実施せよ (Evidence Quality: B; Strong Recommendation)
眼窩の合併症は、眼球の浮腫、とくに、眼球突出や外眼筋の機能不全があるときに疑われる。眼窩の合併症は、以下の5つに分類される。
- 浮腫・滲出液(炎症の主座は副鼻腔)
- 骨膜下膿瘍
- 眼窩蜂巣炎
- 眼窩膿瘍
- 海綿静脈洞閉塞
浮腫以外の4つは、実際に眼窩に炎症を合併しているが、これらは造影CTで最もよく描出できる。
頭蓋内の合併症は、眼窩の合併症より稀であるが、より重篤である。頭蓋内の合併症は、強い頭痛、羞明、痙攣発作、他の神経学的所見を伴う患者で疑う必要がある。眼窩内の合併症には、以下が含まれる。
- 硬膜下膿瘍
- 硬膜外膿瘍
- 静脈閉塞
- 脳膿瘍
- 髄膜炎
造影CTと造影MRIを、眼窩・頭蓋内合併症診断の正確性で比較したスタディはない。一般的には、造影CTが最初に選択される。造影CTは素早く実施可能であるが、被爆への関心も高まっている。
造影CTで見つけられなかった異常を造影MRIが描出したケースが、とくに頭蓋内の合併症に多く報告されている。
年長児であって鎮静が必要ない場合、とくに、頭蓋内の合併症が疑われるケースであれば、造影MRIが望ましいかもしれない。