ロタワクチン開始後、下痢死亡数が顕著に減少 in メキシコ
下痢は世界の5歳未満小児の死亡理由第2位であり、年間180万人が死亡する。
ロタウィルスはその最大の原因であり、50万人以上が死亡する。
ロタワクチン(ロタテックとロタリックスがあるが、ここではロタリックス)は、ロタ感染時の重症化を85%防ぐという大規模トライアルのデータがある。
メキシコでは、1990年台以降、水や衛生環境の改善などによって下痢による死亡は大きく減少しているが、冬季のロタウィルスによる死亡は減少していなかった。そこで、メキシコは2006年、ロタワクチンを世界で初めて導入した国の一つとなったのであった。
N Engl J Med. 2010 Jan 28;362(4):299-305.
Effect of rotavirus vaccination on death from childhood diarrhea in Mexico.
PMID: 20107215
背景:
メキシコでは2006年2月からロタワクチン(ロタリックス)が段階的に導入された。この研究では2008年~2009年にかけて、メキシコにおける小児の下痢による死亡を調査した。
方法:
メキシコの年間出生数は190万人。2ヶ月、4ヶ月時点での接種を推奨。
2003年1月~2009年5月の期間で、5歳未満児の下痢による死亡のデータを分析。
ワクチン前の2003年~2006年と、ワクチン後の2008年~2009年を比較した。
結果:
ワクチンカバー率:
2008年のロタシーズン前まで、11ヶ月以下の対象112万人。
うち1st dose を74%、2nd doseを51%が接種。
2003年~2006年の5歳未満の下痢による死亡のうち、67%が11ヶ月以下、23%が12~23ヶ月の児に起きている。
ロタワクチン開始後の死亡数の顕著な減少が、冒頭に示したFigure1に示される。
2003年~2006年の間、年間1464~2002名(中央値1793)の下痢による死亡があった。10万対18.1。
これが、ワクチン開始後には、1118名、10万対11.8で、35(29-39)%の著減、P<0.001。
11ヶ月以下の児では、10万対61.5から36.0へ、41(36-47)%の減少。
12~23ヶ月児では、10万対21.1から15.0へ、29(17-39)%の減少。
この範囲の児はほとんどがワクチンを接種していないにもかかわらず。
24ヶ月以上の児では、10万対2.9から2.7へ。もともとの死亡率が低いこともあり、有意差なし。
コメント:
ロタワクチン、凄まじい威力である。
日本でのロタウィルス感染による死亡例は年間数例と推定されており、日本でロタワクチンを推進される理由は重症例の減少、入院数の減少、医療費の減少、小児科医の確保、と言った点なので、メキシコとは医療事情が大きく異なるのであるが。
この記事を書いている2013年5月現在、日本もロタシーズンである。
2012年秋からロタワクチンの接種が日本でも始まったが、まだ自費であり、薬価が高いこともあって、なかなか全員にはおすすめできない。
とは言え、当院の立地によるのかもしれないが、当院で2ヶ月目からワクチンを接種する方の半分以上はロタも接種していただいている。
先日、幼稚園児の兄がロタに罹患し、生後5ヶ月児に感染しないか、という話題になったが、ワクチンを接種していたので、まあ感染したとしても重症化しないでしょうというご説明ができた。「やっといてよかった~」と心底ほっとされていた。値段分の価値はあるように思う。