僕が第三世代セフェム経口投与を主張した、2ケース。
気道感染症に第三世代セフェム内服製剤なんて処方する奴はダメだ、などと普段吹聴している不肖の私でございますが、最近実は2例に使用しました。いずれも急性中耳炎の重症で、他剤が無効と判断されたケースでした。時々は使うなあと思いました。
とくに1例目は、「第三世代セフェムのほうがいい」と主張したケースで、言いながら自分でも、これは凄いことを言ってるなあと思っていました。
ケース1
近くの開業耳鼻科で、急性中耳炎と診断され、AMPC+CVA(クラバモックス(R))が処方されていた1歳児。
5日間で治療を終了し、鼓膜所見は改善していた。
治療終了後一週間で、発熱を訴えて当院を受診。
両側鼓膜とも発赤混濁を認め、とくに左鼓膜は強く膨隆しており、重症の急性中耳炎と判断。
抗菌薬内服の適応と考えられたが、最近AMPC+CVAの内服歴があるため、これが無効の起炎菌、おそらくH.influenzae(BLNAR)と推定。
CDTR(メイアクト(R))の倍量投与にて治療を開始した。
しかし、その受診後、予約してあった耳鼻科を再受診された。
そこでは、当院での処方を言ったか言わなかったのか、AMPC+CVAの再投与が選択された。
当然、調剤薬局から、当院のCDTRをキャンセルして良いか、と問い合わせが入る。
「AMPC+CVAが無効の菌種を想定してCDTR倍量を選択している。開業耳鼻科のほうに、AMPC+CVAで良いのか問い合わせるべき」と返事をした。
当院のデータでは、ABPC(≒AMPC)耐性のH.influenzaeは全体の50%ほど。
それでも肺炎ならAMPC投与で十分であるし、中耳炎でもAMPC大量投与すれば大体効果があるので、
第三世代セフェム内服のお世話になることは殆ど無い。
中耳でのセフェム系の組織内濃度は期待できないので、投与するとしても倍量投与が原則であるが、
それにしても、第三世代セフェムの経口投与を主張するハメになるとは。
ケース2
2週間ほど前に初診のケース。
初診時、感冒症状と眼脂・結膜充血があり、鼓膜は軽度の発赤と混濁を認めた。
ウィルス性咽頭扁桃炎+急性中耳炎(軽症)と判断し、去痰薬内服での経過観察を選択した。
その後、発熱を認めて再受診。これは他医師が診察。
この時は両側鼓膜が発赤腫脹しており、急性中耳炎の増悪と判断され、AMPC 60mg/kg/dayが処方されている。
しかしその後も症状が持続するとのことで、再び自分が診察することになった。
AMPC処方時には鼻腔培養が採取されており、H.influenzae(BLPAR)が検出されていた。
(本題とは関係ないが、初診時に多量の眼脂を伴っており、H.influenzaeかなあと想定していた。勉強って大事だ…。)
BLPARでAMPC無効であれば、大手を振ってAMPC+CVAを選択できる。
(これがBLNARなら、CVAを加えたとしても意味が無い)。
が、AMPC+CVAは単包化製剤である。これは吸湿性があるためであろう。
単包化されていると、基本的にその包装の単位でしか内服量を調整できない。
このケースの場合も、体重に合わせた適切な量(80-90mg/kg)に、うまく調整することができなかった。
やや不適切な量(このケースでは100mg/kgになりそうだった)にするか、CDTR倍量投与にするか迷ったが、
CDTR倍量投与を選択した。
こうも短期間に第三世代セフェムを2例に投与することになろうとは。