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simbelmynë :: diary

小児科医療 & 趣味はコンピュータいじりです

iPhoneを買い換える、か?

プライベート

現在使用しているiPhone4(Softbank)からiPhone5sに替えるにあたり、MNPをしようと考えていた。自宅の光回線eo光を使っているので、MNPするならその先はauだ。

で、Androidスマートフォンに替えても月々の支払があまり変わらないことを知った。仕事に使っているノートPCはVAIO Zなので、なんとなくだが、SonyXperia UL(2013年5月発売)はどうだろうと思って調べてみた。

 

スペック面ではiPhone5sより良いが、果たしてどうか。実機を見たくなったので、auショップにいってみた。結果、5分ででてきた。どうであったか。

 

良いと思ったところ

・画面解像度が高い

その分画面サイズも大きいので良し悪しだが。

・おさいふケータイ

いまはEdyANAカードで使っている。これをスマホに統合できれば超絶かなり便利だ。

・防水

・カメラ

画質が比較的良い、だけでなく、起動が速いのがとてもうらやましい。

・動画ファイルのコンバートが不要

ま、あんな動画を見ることも、あるかもしれないし!

Googleにつかまるか、Appleにつかまるか。

いまのところ、Googleのほうがつかまり(捕まり)やすいと感じている。メールはGmailだし、Google DrivePicasaも使っている。この分野のiCloud関連のウェアはまだ未熟だ。親和性の高いであろうAndroidを検討するのは自然だ。

・地図

いまのところ、地図はGoogleが優れているし、御存知の通りAppleの地図は未熟だ。もちろんGoogle MapのiOSアプリを使えば良いのだし、商業的にGoogleiOSから手を引くことはないだろうが、最新機能はAndroidから実装していくだろう。

 

もともとのAndroidの弱点として

iOSに比べるとセキュリティに不安がある

ウィルス対策が必要となる。仕事で使うアイテムなのでなるべく不安は持ちたくない。また、そんなものにCPUやバッテリを消費されるのがムカつく。

・カスタマイズ性が高すぎる

あれこれとイジって時間を浪費する気がする。というか絶対する。自分の消費できる時間は限られているのだ。

 

残念であったところ

・重い。厚い。しょうがないけど。

iPhone4   137g  9.3mm

iPhone5s  112g  7.6mm

Xperia UL 145g 10.5mm

・インカメは31万画素と低い。店舗で見たところ、それでもそんなに悪くはなかったが。自分の顔なんてそんなに高精細に写されてもね。

 ・バウンスが無いとかなりUIの現実味が損なわれる。こんなに大事だったなんて、ちょっと意外だった。これはAppleにパテント取られてるからしかたない。他の方法でバウンスを代替しているUIもあるそうだが、いまのところバウンススクロールがもっとも優れていると言わざるを得ない。

 ・使わないであろう多数の機能がアイコンで実装されていて、それぞれ一目見て分かるアイコンになっておらず、よく似たものが使われていたりした。また、アイコンはシンプルでなく、目にうるさい感じがした。

代替のアイコンを見つけることもできようが、auの独自実装アプリならそうもいかんであろう。ま、消せるなら消せば良いのだが。

・アイコンの名称表示に半角カナが使われていたり、二行にまたがったり。上記アイコンの件もそうで、その見やすさが使いやすさに決定的に影響するのだ、という自覚がない点が、どうも不安にさせる。これが、やっぱiPhoneでいいわ、と判断した一番の理由。

 

UIはまだiPhone優位だと思う。Androidを触ってみて、「何をユーザーにさせないか」という取捨選択が大事なのだと思った。

 

とは言え、Xperiaという機械そのものにある利点は大変に大きい。まだ保留にしたい気持ちもあるのだった。

感染制御のお仕事のお話

感染症

なかなか小児科医がこういう仕事をするのは難しい。

 

医師と患者の間には知識の不均衡があって、こうしたほうが本当は良いのになあと思っても、患者さんがそれを選択するとは限らない。

同様に、医師同士にも知識の不均衡はあって、こうしたほうが良いのになあと思うことはある。感染症診療に関して言えば、自分のほうが詳しいという自負はある。あるし、そもそも仕事なので、治療法をおすすめしたり、ツッコんだりはするのだけれど、やっぱり同様に、主治医がそれを選択するとは限らない。

 

上記の例に関していえば、分かる人はきっと呆れると思う。だけど、問題はもう治療の良し悪しのレベルではなく、如何に僕のいうことを信じてもらえるかという、僕自身の能力に負うところも大きい。

 

今の医療のレベルってこんなものであって、改善できる余地はまだ山ほどあるのだ、とも言える。

手洗いと手の消毒は、ライノウィルス感染による感冒を防がない RCT

文献 感染症

A randomized trial of the efficacy of hand disinfection for prevention of rhinovirus infection.

Clin Infect Dis. 2012 May;54(10):1422-6

Turner RB et al.

PMID: 22412063

 

背景:

感冒(この文献ではライノウィルス感染症にフィーチャー)を予防するために、手の消毒がよく言われている。

しかしその有効性は、「自然な環境下では」確立されていない。

そこでこれを評価する。

 

方法:

2009年秋、若年成人のボランティアを対象にして、9週間のトライアルを行った。

対象は212名で、消毒を指示する群と、処置なし群の2群にランダムに割り付ける(当然であるがブラインドにはできない)。

 

消毒は手洗いの後に行う。62%エタノール+2%クエン酸+2%リンゴ酸。

このレシピは、著者らの過去の調査で、ウィルスを除去する効果(PMID:20047916 )「ウィルスを意図的に手につけた場合の」感染予防効果(PMID:15215114 )が認められているものである。

この手洗い→消毒を、起きている間3時間おきに行う。

 

トライアルは9週間行われるが、とくに消毒群においては、指示された処置の90%以上が実施できていなければ、その時点で脱落となる。

ボランティアは毎日日記をつけて症状を記録する他、手洗いと消毒をした時間も記録する。毎週受診して状況確認などを行う他、鼻汁を採取してライノウィルスのPCRが実施される。

 

プライマリ・エンドポイントはライノウィルス感染による感冒症状。セカンダリ・エンドポイントはライノウィルス感染(コロナイゼーション含む)、感冒症状。

 

結果:

消毒群は116名中91名が9週間完走、処置なし群は96名中95名が完走。コンプライアンスの違いは仕方がない。

脱落までのデータを含めて、212名全員で解析を行うと、

 

感冒症状については、消毒群48(39-57)% vs 処置なし群75(65-83)%で、P=0.01。ぎりぎり有意差ありと言って良いか??

・コロナイゼーション含めたライノウィルス感染では、42(34-51)% vs 51(41-61)%で有意差なし。

・ライノウィルス感染による感冒症状では、22(16-31)% vs 25(17-35)%で有意差なし。

 

実は、トライアルを完走した対象者だけで解析を行うと、

感冒症状についても、55(45-65)% vs 75(65-82)%となり、有意差は消える。

 

結論:

手の消毒はライノウィルス感染とそれに伴う感冒症状を減らさない

 

著者らは過去のスタディで、実験的に手にライノウィルスを付着させ、上記のレシピで感冒症状を防ぐことができるかどうかのトライアルを行なっており、そこでは有意感冒症状を減らすことができていたとのことである。

そこで、なぜ今回のスタディでは有意差が出なかったのか、検討を行なっている。

ひとつは、以前のスタディでは、ウィルスの入った液体に手を漬けてウィルスを付着させ、消毒処置を強制したりと、実験的な面が強かったのに対し、今回はボランティアの自然な行動に任せていること。

2つ目に、液体に入ったウィルスと異なり、鼻汁に包まれたウィルスに対しては消毒効果が及ばない可能性があること。

最後に、手を介した感染以外のライノウィルス感染ルートがあるかもしれないこと。

これらが、今回有意差が出なかった原因として挙げられていた。

 

ラテンアメリカにおけるロタワクチン 利得は腸重積リスクを上回るか?

こどもの病気 ワクチン 感染症

Potential intussusception risk versus benefits of rotavirus vaccination in the United States.

f:id:simbelmyn:20130716162533p:plain

Pediatr Infect Dis J. 2013 Jan;32(1):1-7

Desai R. et al.

PMID: 22929172

 

1999年に発売されたロタウィルスのワクチン「ロタシールド」は、接種後の腸重積リスクが上昇することが懸念されたことから、接種が中止された。

現在、「ロタテック」「ロタリックス」の2つのワクチンが、新たに実施されている。これらのワクチンは、トライアルの時点では腸重積の増加は診られなかったが、発売後の調査では、いずれのワクチンも、接種後1週間以内の腸重積発症リスクが4-6倍に上昇することがわかってきた。

とは言え、ロタウィルスは周知の通り乳幼児の重症胃腸炎、入院、死亡に大きく関与しているので、ワクチンの利益と腸重積による損失を比較しなければならない。

 

ラテンアメリカ14カ国は、2006年からロタワクチンを導入した。12カ国がロタリックス、2カ国がロタテックを採用している。

 

この14カ国の乳幼児Birth-Cohort 950万人が調査対象。

ロタワクチンは、年間144,746人(90%CI 128,821 - 156,707)の入院を防ぐ。

また、年間4124人(3740 - 4239)の死亡を防ぐ。

しかし、腸重積により年間172人(126 - 293)の入院を引き起こし、

そしてそのうち10人(6 - 17)がそれによって死亡する。

以上のように推測された。

 

結論:

ロタワクチンによって得られる利得は、短期間の腸重積リスクを大きく上回る。

 

コメント:

ただし、医療施設の充実していない国も含まれており、日本のように、「ロタウィルスによって胃腸炎になってもそうそう死なない国」では、また別の計算が必要である。

腸炎の受診頻度が非常に高いことや、医療費、親の逸失する給与を含めると、日本でも利得が上回るように思われるが。

 

「アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎ガイドライン2013」概訳、「日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010」との対比 (5)補助治療編

こどもの病気 感染症

(1)診断編

(2)画像検査編

(3)治療判断編

(4)抗菌薬編

(5)補助治療編(←今ここ)

 

補助治療について、以下の項目について言及されている。

 

点鼻ステロイド

炎症を抑制して浮腫を軽減し、ドレナージを期待する治療であるが、炎症がどれくらいステロイドに反応するか、小児にも有効であるかどうか、データが限られている。

成人領域ではいくつかのRCTがあり、プラセボと比較して顕著に症状を改善するとされている。

小児では2つのトライアルがあり、いずれも好ましい効果があるとされているが、その効果は小さい。スタディの設計にも問題があり、明確な結論を出すのが難しい状況である。

 

食塩水洗浄:

鼻腔の異物を除去することと、(高張食塩水の場合は)一時的に組織の浮腫を取り除くことを目的として使用される。

RCTは非常に少なく、またその結果も様々である。小児では有効とするスタディが1編のみある一方で、成人領域でのコクランレビューに有効とする2007年のものと、トライアルサイズが小さくバイアスが大きいと指摘する2010年のものが存在する。

 

去痰剤、抗ヒスタミン薬、充血除去薬:

これらを小児に使用した場合のデータが乏しく、結論を出せない。

ヒスタミン薬は、アレルギー背景のある副鼻腔炎患者のアレルギー的な症状には有効かもしれないが、専門家の意見レベルでは、小児のABSに使用すべきではないとされている。

 

※去痰薬と抗ヒスタミン薬は自分は使うことがあるが…。

ヒスタミン薬は逆に閉塞を助長したり、痙攣を助長したりするので、一般的には小児にはもはや用いなくなっている。自分も感冒罹患時には基本的に処方しない。また、アレルギー性鼻炎だなと思ってもロイコトリエン受容体拮抗薬でしのごうと努力する。

 

が、実際に感冒と鼻汁鼻閉症状が連続する小児で、夜間眠れないと受診されるケースにおいて、抗ヒスタミン薬と去痰薬の組み合わせで良くなることも多い。抗ヒスタミン薬の副作用(眠気)かもしれないけれど。なので、自分はこれまではアレルギー性鼻炎に伴う副鼻腔炎、あるいは、今回の急性細菌性副鼻腔炎にかかわらず、これらを使用していた。

 

日鼻誌2010との対比

日鼻誌2010では補助治療に割かれている割合が大きい。

  • 上顎洞の穿刺排膿について、有効であるが、抗菌薬の発達に伴い施行回数が減少している。
  • 鼻処置(吸引と洗浄)は治療に必須。また、ネブライザーで炎症の改善が期待される。

・・・しかしそのエビデンスは非常に曖昧である。RCTがなかったり、画像上の改善やアンケートを根拠としていたり、ネブライザーに関してはそもそも有効性を示したスタディが殆ど無かったりしている。思うに、有効という根拠はないのだが、日本に数多い耳鼻科開業医への配慮的な心情があるように思う。データ的には、ばっさり切り捨てたいという感じもあるが・・・。

  • 血管収縮剤(充血除去剤)は、一過性に改善はするものの、小児への連用がしないこととなっている。
  • ステロイド点鼻は、欧米では推奨される可能性があるものの、日本では保険適応がないと述べている。

・・・抗ヒスタミン薬と去痰薬に関する言及は日鼻誌2010にはない。

副鼻腔炎の定義がAAP2013とくらべてかなり「感染症より」なので、抗ヒスタミン薬の使用が考えにくいのは分かる。去痰薬は使用しても良いのではともおもうが、エビデンスが無いのはAAP2013の記述からわかる。去痰薬をやたら使いたがるのも「日本脳」なのかもしれない。

 

 

「アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎ガイドライン2013」概訳、「日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010」との対比 (4)抗菌薬編

こどもの病気 感染症

(1)診断編

(2)画像検査編

(3)治療判断編

(4)抗菌薬編(←今ここ)

(5)補助治療編

 

抗菌薬の第一選択はAMPCあるいはAMPC+CVA。(Evidence Quality: B;Recommendation)

注:AMPCは、日本の商品名で言うと「サワシリン」「パセトシン」「ワイドシリン」他いろいろ。ちなみに、うちの採用はワイドシリン。AMPC+CVAは、商品名で言うと「クラバモックス」

 

ABSの起炎菌は、S.pneumoniae(Sp)30%、H.influenzae(Hi)30%、M.catarrhalis(Mc)10%と推測されている。黄色ブドウ球菌は稀、しかし、眼窩・頭蓋内合併症は引き起こしやすい。嫌気性菌も稀。

 Spのうちペニシリンに耐性をもつのは10-15%。(※日本とほぼ同様)

Hiのうち10-42%はβラクタマーゼ産生してペニシリン耐性。(※日本と事情が異なる)

 

耐性を考える必要がある要素は、

  • 2歳未満
  • 30日以内の抗菌薬治療歴
  • 保育所

である。

耐性の可能性が少ない場合は、AMPCを推奨する。投与量は45mg/kg/day、分2である。耐性Spが多い地域では、AMPC 80~90mg/kg/day(最大2g)分2で治療を開始しても良い。

 今後数年のうちに13価肺炎球菌ワクチンが普及し、Spが減少してHiが増加する可能性がある。

βラクタマーゼを産生する耐性Hiが多く観察されるようになれば、AMPC+CVA 45mg/kg/day、分2が最適である。重症であったり、上記の耐性リスクが高い場合は、AMPC+CVA 80~90mg/kg/day(最大2g)分2としてもよい。

 

日鼻誌2010との対比

 AAP中耳炎ガイドライン2013のときも書いたが、ここでも同様に、日米の耐性菌分布の違いを考慮する必要がある。

日鼻誌2010でも、ファーストチョイスはAMPC常用量である。ここはAAP2013と同じであるが、基本的に日本でAMPCというと分3で処方されることが多いだろう。

 

 日本でも、ペニシリン耐性のHiは多いのだが、その多くはSpと同様にペニシリンの結合部位が変異しているタイプであり、これはBLNARと呼ばれる。一方でこのガイドラインで注意されている、βラクタマーゼを産生するような耐性Hi(BLPAR)は多くはない。

 

CVAはβラクタマーゼ阻害剤であり、βラクタマーゼを産生する菌を相手にする場合に有効なのであるから、日本においては、耐性リスクがあるからといって、AMPCをAMPC+CVAに変更する意味は、ない。腸内細菌をより多く殺してしまうので、副作用としての下痢が多くなるばかりである。

 

逆に日鼻誌2010では、AMPC無効の場合の選択肢として、CDTR(メイアクト)、CFPN(フロモックス)、CFTM(トミロン)のセフェム系内服薬の高用量投与も選択肢に入っているのだが、これも中耳炎の時に書いたのと同様、βラクタマーゼを産生しない耐性Hi対策である。

 

これらのセフェム系内服抗菌薬は、腸管からの吸収が悪く、病変部位への分布も悪いので、高用量投与が必須であり、日鼻誌2010でも、高用量投与しか選択肢はない。普通にフロモックス3錠分3とかで処方しているお医者さんがよくいらっしゃるが、これは良くないことである。

 

また、CCL(ケフラール)、CFDN(セフゾン)は、日本の感受性分布からいって推奨されないとも明記されている。セフゾンを処方されることがまだまだ開業医レベルでは多いとおもわれるが、これも良くない。

 

なお、追記として、日鼻誌2010では、TBPM(オラペネム)、についての言及がある。耐性菌に対して有効と思われ、難治例や重症例で他の薬剤が有効でない場合に考慮する旨、記載されている。適応が通っているので書かざるをえないのだろうが、医療が整った日本であれば、このような場合は入院して点滴による加療を行った方が遥かに良い予後が期待できる。子供にリスクを背負わせて内服に拘るのはよろしくないので、実際に処方されることは稀だろう。

 

キノロンについては、日鼻誌2010では非推奨。中耳炎に使用が認められているTFLX(オゼックス)は副鼻腔炎に対するう保険適応がないとのことで非推奨である。が、それ以前に事情はTBPMと同様で、実際に処方されることは多くない。

 

経口投与を受け付けない児の場合は、50mg/kgのCTRX(ロセフィン)での治療も可能である。24時間後に症状改善傾向を認めれば、経口投与にスイッチ可能であるし、症状改善を認めなければ、さらなるCTRX投与が必要となるかもしれない。

 

ペニシリンアレルギーの既往がある場合であってもセフェムを使って良い(同じβラクタム系であるが、重篤なアレルギー反応が交差して発生する可能性は低い、というのは、近年よく知られたことである)。

 

ちなみに、ST合剤とAZM(ジスロマック)は、感受性が不良であり、ペニシリンアレルギーの患者の場合の治療選択肢からも「除外する」とされている。

 

日鼻誌2010との対比

日鼻誌2010のマクロライドについての言及は、エビデンスの羅列でよくわからないのだが、最終的には、マクロライドはSpに耐性が多く第一選択とはし難いが、HiであればAZMが有効、成人例ならばAZMの高用量単回投与が「期待できる」とある。いずれにせよ、無根拠にファーストチョイスでEM(エリスロシン)、CAM(クラリス/クラリシッド)、AZM(ジスロマック)などのマクロライドを処方するのは駄目だろう

  

治療期間についてはスタディに乏しい。観察研究からの推奨は10日から28日まで幅が大きい。別の決め方として、「症状が消失してから7日後まで」というものがある。この戦略は症状の個人差にも対応可能であり、最短の投与期間が10日間程度、過剰に長い治療も避ける事ができる。

 

日鼻誌2010との対比

当然日鼻誌2010でもエビデンスは少ないとされる。一応7~10日間を推奨している。

 

最初の選択(抗菌薬投与/経過観察)を行なってから72時間以内に、再評価すべきである。(Evidence Quality: C; Recommendation)

治療開始後72時間で悪化を認める場合、改善のない場合は抗菌薬治療を変更すべきである。また、経過観察72時間で改善のない場合は、抗菌薬治療を始めるべきである。(Evidence Quality: D; Option based on expert opinion, case reports, and reasoning from first principles)

 

「アメリカ小児科学会 小児急性細菌性副鼻腔炎ガイドライン2013」概訳、「日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010」との対比 (3)治療判断編

こどもの病気 感染症

(1)診断編

(2)画像検査編

(3)治療判断編(←今ここ)

(4)抗菌薬編

(5)補助治療編

ABSのうち、「重症」群と「悪化」群には、抗菌薬を処方すべきである。(Evidence Quality: B; Strong Recommendation)

ABSのうち、「持続」群では、抗菌薬を処方するか、3日間の経過観察を行うかを選択する。(Evidence Quality: B; Recommendation)

 

2001年のAAPガイドラインでは、ABSと診断された全例に抗菌薬治療が推奨されていたが、このガイドラインでは「症状が持続している」タイプのABSにおいては、経過観察の選択肢が設けられた。

ただし、「重症」群と「悪化」群では、引き続き、抗菌薬治療がなされるべきである、としている。

 

抗菌薬の投与により、ABSは改善が見込める(NNT3-5)が、一方で自然軽快する児もいる。

「持続」群の症状は一般的には軽いが、それが児のQOLに与える影響は様々であり、抗菌薬によって得られる利益も、その副作用もまた様々であるので、結局、バランスが必要となり、治療を行うか経過観察をするかは家族と相談する必要がある。

 

ガイドラインでは「持続」群の中でも、以下の患者に対して、3日間の観察という選択の余地を残している。

  • 過去4週間以内に抗菌薬治療を受けていない
  • 中耳炎、肺炎、リンパ節炎、溶連菌生扁桃炎など、他に細菌感染症を伴っていない
  • 眼窩合併症、頭蓋内合併症がない
  • 喘息、嚢胞性線維症(白人に多いらしい)、免疫不全、過去の副鼻腔手術歴、上気道の解剖学的異常などの持病を持たない

 

逆にいえば、これに当てはまらない患者に対しては抗菌薬の使用を推奨している。

 

日鼻誌2010との対比

日鼻誌2010では、重症度分類にスコアリングシステムを導入し、軽症・中等症・重症を分けた上で、軽症例は経過観察を推奨、中等症以上は抗菌薬化療としている。日鼻誌2010のほうが厳格である一方、日常診療でスコアリングシステムを入れるのは煩雑であることと、鼻腔所見が必須であることが多くの小児科医には難しく感じられるだろう。AAP2013は、この点が非常に大雑把であり、国民性のような対比が感じられる。